逝くものの心構え、遺されるものの生き方を夫婦で話し合っていました

遺族アンケート

80歳夫/看取った人・妻/東京都/2022年回答

尊厳死協会に登録していて本当に良かったと感謝しております。主人は80歳をこえ、金婚式を迎え、ちょうどよいと思ったようでした。62歳で不安障害を発症し、仕事を辞めましたが、趣味のビリヤードでたくさんの友人に恵まれ楽しく生活をしていました。健診や予防接種が嫌いで、何年かに1度の血液検査でも悪いところはありませんでした。私たちは子どもに恵まれず、私が卵巣がんや脳梗塞を発症、主人を一人残して逝けない状況に心を痛めておりましたが、その分逝くものの心構えや残されるものの生き方については、よく話していました。80歳までにお互いの公正証書遺言を作成し、貴協会の「私の希望表明書」に署名してまずは安心しましたが、金婚式の3週間後に誤嚥性肺炎で倒れてしまいました。


入院中はコロナで面会もかなわず、3週間後には痛いとか苦しいとかの症状も見ることなく、「胃ろうになりますがどうしますか?」と急に言われました。一瞬びっくりしましたが「主人はこれを望んでいたのだ!」とすぐ理解し、尊厳死協会の話、延命治療拒否の署名を提示して「何もせず静かに老衰を待ちたい」とお願いいたしました。

コロナ禍で面会できないことで私の心は落ち着かず、面会可能な病院を探していただき、幸いにも区内で転院でき、亡くなるまで20日間毎日穏やかな時間を過ごすことができました。

逝くもののお手本のような幕引きでした。後は残されたものがしっかり生きていかねばと思いを新たにしています。関わってくださった皆々様も、主人の意思を尊重し、私の気持ちを大切に対応してくださいました。葬儀は私一人で行いましたが、とても穏やかなお別れができ主人共々感謝しております。

協会からのコメント

逝くものの心構えや残されるものの生き方を夫婦でよく話し合っていた、80歳までにお互いの公正証書遺言を作り、協会の「私の希望表明書」に署名した……子どもがいてもいなくても必要で大切なことだったと思います。緊急入院後胃ろうの判断を迫られても、本人の希望を伝えることができたのは、そうした希望の確認と話し合い、書面作成があったからだと思います。

コロナ禍で面会ができない病院であっても、諦めずに希望がかなえられるところへ転院された実行力。まさに主体的に人生を生きる“リビング・ウイル”のお手本です。後期高齢期を迎えたご夫婦の逝き方モデルとして多くの人々の参考にしていただきたい「看取りのエピソード」です。