人工呼吸器を装着した母の姿をみて「ああはなりたくない」と入会
遺族アンケート
86歳母/看取った人・娘/東京都/2022年回答
母は40年ほど前の自分の母親の入院時、意識もなくただ人工呼吸器で数週間生かされ、だんだんあちこち壊死し始めた姿を見たことから「ああはなりたくない」と長年言っていました。尊厳死協会の存在を知って晩年入会し「最後まで口から食べたい、最後は家で死にたい」という希望を私は知っていたのですが、結局、両方ともかなえてあげられませんでした。
昨年6月に脳梗塞で入院後、誤嚥性肺炎になり口からの摂取が難しくなり、その後異変に応じて徐々に点滴の量を減らされながら、それでも母は一旦回復・安定し、7月末に医療特化型有料老人ホームに移りました。入院時、ホーム移転時ともに、母の希望はそれぞれ主治医に伝えましたので、母の治療・療養方針についての相談の際「お母さんの希望からすると……」とひんぱんに主治医からもち出されました。少しでも回復・治癒するのではないかと希望をもちたい私と姉に対して、主治医は早く治療を打ち切っておとなしくその時を迎えるように誘導しているように見えたり、被害妄想的な思考になることもありました。そして私たちの決断ひとつで、母が苦しい思いをするかもしれなかったり、命の期限まで決めかねないところが怖かったです。
今になって思うと、老人ホームでの2か月間は、私にとっては母を思って多少尽力できた(口腔リハビリ施設など検討していました)自己満足の記憶はありますが、母からすれば知らないところに2か月も押し込められるより、短い時間でも勝手知ったる我が家で死にたかっただろうなと、今頃ようやくごめんねと思っています。ただ、誤嚥性肺炎後、まともに意思の疎通を図れなかった状況で、スパッとその決断はできませんでした。「死ぬ時にどうしたいか、うちは決めてあるものね」と、母と時々話していたのですが、いざそうなってみたら、そんな単純に割り切れる状況でなく、何も決めていないに等しいくらい難しかったです。
協会からのコメント
「相手の意思を尊重するという決断」の困難さを、ありのまま投稿してくださりありがとうござました。「子どもにとって親(特に母)の『死』は考えもつかないと言う方が多い。親の希望をかなえるよりも『親を亡くす恐怖』が勝るように思う」とは、終末期医療に長年取り組んできた看護師たちの感想です。
お母様は、子どもたちに長年自身の希望を伝え最期の時の決断を委ねたつもりだったのでしょう。そのため医療者が判断を伺う時に「お母さんの希望からすると……」という言い方になったのでしょう。お母様の意思疎通ができない時に代諾者となった子どもたちが、自分たちの決断に迷い、お母様が期待した対応ができなかったと後悔し、つらい日々を送るのは苦しいことだと思います。そのために代託者となる人は血縁関係に限らず、信頼できる第三者か弁護士を指定する人もいます。
最期を迎える過程はご本人の意思だけではなく周りの方のための時間でもあり、考え迷う時間はご本人を想う大事な時間だったのです。意思を尊重し決断されたご遺族の投稿と同じように意義ある投稿だと思います。皆様と共にご冥福をお祈りいたします。