後見人(行政書士)による看取り

遺族アンケート

85歳女性/看取った人・行政書士/神奈川県/2022年回答

後見人に就任した際に、本人の持ち物からカードと尊厳死宣言が出てきました。がん告知を受けた時、緩和ケア、救急搬送先緊急時には必ず提示したので、医師にご理解いただけました。身寄りのない方には、医療同意してくださる方がいないので(登録時にはいらしても死亡)、後見人にとっても、ご本人にとっても助かりました。事前指示書がないことは残念でした。

協会からのコメント

後見人に指定された人が実際にどのような役割を果たすのかがわかる「看取りのエピソード」です。

いよいよ、本格的な高齢社会の到来です。自分の介護・看取りをしてくれる家族以外の第三者(代託者及び後見人)を真剣に考えなくてはならない時代になりました。高齢者が第三者に頼らざるを得ないケースは、生涯独身だったからだけではなく、家族が次々に亡くなってしまったり、家族と疎遠になってしまったりなど理由はさまざまですが、確実に増えていくと思われます。

このエピソードでは、成年後見人が本人の持ち物の中からカードと尊厳死宣言を見つけたので、医療者に本人の意思決定として提示できた、と理解できます。

縁者がなく、認知症などによって一人で決めることに不安や心配のある人が、いろいろな契約や手続きをする時にお手伝いしてくれる制度が成人後見制度。成年後見人が看取りをする時に、本人が「尊厳死宣言」を持っていたことで希望に沿った最期を迎えることができたのはとても良かったと思います。

事前指示書とは「自分で判断できなくなった場合に備えて、どのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないかなどを記載した書面」で、尊厳死宣言とは異なるものです。厚生労働省の調査(平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査)では、事前指示書を作成することに賛成の方でも実際に作成している一般国民は約8%でした。一人暮らしの方が将来を考えた時、どちらの書面も作っておく方がいいと思いますが、なかなかできないのが現実でしょう。尊厳死宣言を持っていただくだけで十分な気がします。

しかし、尊厳死協会のリビング・ウイルも2022年に改定し、新たに事前指示書の内容に踏み込んだ記載ができるようになりました。最寄りの支部、サロン活動などに参加して、事前指示書の書き方や疑問点など、何度でも見たり聞いたり、話題にしていただけますように。会員の皆様と共に「事前指示書」への市民の関心をもっと高めていけるように努力していきたいと思います。

編集部注:
※代託者は認知症がすすんだり意識がなくなった時、自分の代わりに医療的処置や治療に関して代弁してくれる人のこと。日本ではまだ代託者の法的担保はありません。後見人は主に資産管理が役割、医療的判断はできないことになっています(2019年5月「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」より)。
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
●参考:
【情報BOX】看取りのプロセスで家族が果たす役割 No.2 入院・入所時の身元保証人は誰にお願いしますか?