グループホームの規則で救急搬送

遺族アンケート

89歳母/看取った人・子ども/北海道/2022年回答

本人はかなり進行した認知症だったため、グループホームにお世話になっていました。そこである日突然、介護士さんの目の前で倒れ、心停止したそうです。グループホームから連絡を受けた時に、リビング・ウイルのことは伝えましたが、ホームの規則とのことで救急搬送されてしまいました。結果的に救急外来でも心臓が動くこともなくそのまま亡くなりましたが、もし再び心臓が動き出しても医師にはリビング・ウイルのことを伝え、無理な延命は望まない旨を伝えるつもりでした。実際、生前の母が持っていた会員証と尊厳死を望むペーパーは「母本人の意志」を伝えるものとして、とても心強いものでした。

協会からのコメント

人生の最終段階の両親を介護施設に委ねる時、「救急搬送」しないという同意の確認が必要であること。そして親を亡くした家族の心のケアと同時に、介護職員の心のケアも必要であることを察知してほしい「看取りのエピソード」です。

家族ではケアしきれない「進行した認知症」だったからこそ、グループホームに入居したはずです。この方のように生前(認知症になる前に)尊厳死協会の会員証を持っていたにもかかわらず「ホームの規則で救急搬送される」という事態は、その規則こそ何とかならないものでしょうか?

介護施設での「ある日突然の心停止」は起こり得るもの。介護施設は生活の場であり、医療の場ではありません。介護ケア職はご利用者様の日常の生活を守ることに誇りをもっています。日常の暮らしの中で起こった突然の命の終わりも自然な看取りとして受け止められるようにならなければ、介護職員の矜持は保てなくなります。さらに「突然の心停止」という事態に巡りあった介護職員の心的ケアの必要にも、もっと社会の関心が向いてほしいと思います。

終末期の親と生活を共にした介護職員は、時として血縁のご家族以上に「家族している」ものです。介護施設での死別の哀しみも「仕事でしょう、だから平気でしょう」と言われて傷つくケア職がいることを「小さな灯台」は代弁しておこうと思います。

介護施設に介護のプロはいても、看取りのプロはまだいません。たとえ、いたとしてもプロだから傷つかないとか、哀しみの痛手を受けないなどという人はいないのです。この課題は医療職、介護職だけの関心事ではなく、介護を委ねるご家族の皆様の関心を啓発しなければどうにもなりません。ぜひ広く、会員の皆様、一般市民の皆様の議論をお願いいたします。貴重な投稿をありがとうございました。