「尊厳死協会に入会している」と言うだけでスムーズに事が運びました

遺族アンケート

93歳母/看取った人・息子/神奈川県/2022年回答

緊急入院時に当直医の先生に「本人は『尊厳死協会』に入っています」と口頭で伝えました。そのことが、その後、病院内の担当医や担当看護師、ソーシャルワーカーさんに共有され、さらに転院先の事務方や担当医に事前に伝えていただいたので、とてもスムーズでした(何回も説明しなくて済んだという意味です)。

本人は「事前指示書」を数年前に用意していましたが、それや会員証を見せることなく『尊厳死協会』の一言だけで、こんなにスムーズにいくとは思わず、とても驚くとともに助かりました。「事前指示書」に本人が書いた内容の中に「延命治療はしないこと」「点滴はしないこと」がありましたが、「点滴」が延命治療に当たるかどうかは医師の判断に任せるしかなく、結局救急治療としての点滴を続けました(全く点滴をしなければ感染症でもっと早く亡くなっていたと思います)。この段階で本人の意志の確認はできなくなっていたのですが、本人は「点滴をしてくれるな」と思っていたかもしれません。結果、私たちは最低限の治療(胃ろうや中心静脈点滴は行わず、末梢点滴だけにする)をお願いし(医師もそれを勧めてくれた)、最期を迎えることができたので、本人の意志を守れたと思っています。

しかし、本人が本当に満足していたかどうかについてわからず、若干悔いが残っています。いずれにせよ、リビング・ウイルの意思表示を事前に家族に伝えておくのは、とても大事なことだと感じました。本人がリビング・ウイルの存在を知って、入会していたことに感謝します。

協会からのコメント

リビング・ウイルを提示しなくても「尊厳死協会に入っています」というだけで医療者が共通認識をもって対応していただけたという事実。「尊厳死協会」の認知度が向上していること、死に向かう中で不要な医療は受けたくないと希望する人が多いことが社会的に知られてきていることを実感しました。

リビング・ウイルは無治療ということではありません。「点滴をしてくれるな」との希望は苦痛を増やすような点滴はしてほしくないということであり、苦痛を緩和する(この場合は感染症に対するもの・熱や筋肉痛等の症状を緩和する)ためのものは別だと納得しましょう。

ご家族の「本人の意思を尊重してやりたい」という思いが十分に活かされた、ご本人にとっても満足な「看取り」だったと思います。それで良いのですよ。

共にご冥福をお祈りしております。くれぐれもご自愛ください。