規則の中で最善を尽くしてくれた救急隊員

遺族アンケート

101歳父/看取った人・娘/東京都/2022年回答

ベッドからずりおり落ちているところを家族が発見訪問医にすぐ電話したがつながらず、119にTel。救急隊員と話している時には呼吸は止まっていました。その後、別の患者さん宅より、医師から折り返しの電話があり、救急車の来訪と重なりました。訪問医から「検死(注)にまわってしまうよ」と言われたことを救急隊員に話し、医師と直接話してもらいました。15分くらいで医師が来てくれることがわかると、そのままベッド脇での救急処置となりましたが、しばらくの間心臓マッサージ(?)(救急活動は続けなくてはいけないとのこと)をしていました。医師にも伝えてあったリビング・ウイルのことは、救急隊員の人にも来てくれた時に伝えてあったので「ひどく押したりしないでほしい」という私の話を理解して、そのようにしてくれました。その後、医師が到着して、死亡宣告。父の遺体をベッド上にあげてくれてから、隊員たちは帰っていきました。規則の中で最善を尽くして、家族の思いも受け取ってくれました。だんだん弱っていたので、仕方がなかったのかもしれませんが……本当に悲しかったです

編集部注
(※)「検死」は死体を検分し、状態や死因などを調べる「検視・検案・解剖」を包括した言葉ですが法律用語ではありません。病院以外での死亡でかかりつけ医がいない(または連絡がとれない)場合には検死が行われます。「検視」は死体や周囲の状況から犯罪の疑いがあるか調べる刑事手続きで法律用語です。

協会からのコメント

何歳であろうと、居場所(病院・施設・在宅)がどこであろうと、ご家族にとっては「死はある日突然の、どう対処してよいかわからなくなるショックな出来事」なのですよね。

在宅医療を選択し、医師による訪問診療・訪問看護を受けて介護する家族は「緊急時にも救急車は呼ばない。必ずかかりつけの訪問医師か訪問看護師に連絡すること」がルールです。頭でわかっていることでもイザ!となると……特に初めての死を経験する家族にとっては慌てふためいて当たり前なのです。

ご家族の混乱を自然に受け止めつつも、訪問医師や救急隊員がリビング・ウイルを理解し、検死にならないように患者・家族の気持ちを尊重した対応をされたことがよく伝わる「看取りのエピソード」です。

在宅医療をスタートさせたら緊急時を想定して、連絡先を目につくところに貼り、家族・ヘルパーさんなど関係者みんなに周知しておきましょう。さらに、イザ!という時の対処の仕方を定期的に話題にして「救急車は呼ばない。まず訪問医師か訪問看護師に電話して待つ。医師や看護師は必ず来てくれる。それまで待っていても大丈夫。私はそばに居るだけでよい。自分を責めなくてよい」と声に出して呪文のように繰り返し唱える時をもちましょう。声に出す。繰り返し自分に言い聞かせることで、イザという時の行動につながります。これは確実な効果がありますからお試しください。
どんなに練習していても、自分の目の前で突然の死を初めて体験した人は、誰でも平静ではいられません。それが当たり前なのです。【情報BOX】「グリーフケア-大切な人を亡くした哀しみを癒すために」も参考にして決してご自分を責めることなく、哀しむ時を大事になさってください。ご冥福を共にお祈りしております。