医学の「役に立つなら」と受け継がれた献体の意思

遺族アンケート

86歳父/看取った人・娘/2024年回答

病院で、父の「延命処置をどうしますか」と尋ねられ、意思表示の書類にサインをしました。

母の時には、病院で尊厳死協会のことがあまり知られておらず、こちらから説明をしました。病院によっては、今でも十分に知られていないと感じることがあります。母は生前、献体を希望しており、その意思を大切にしました。

私は樺太生まれで、父は軍属として現地で生活していましたが、そこで父が病気になり、ようやく日本に帰ることができました。父は担架で船に乗り、看護師さんが付き添って札幌に到着し、そこから汽車で東京へ移動しましたが、東京の病院で亡くなりました。その際、病院から腎臓の一部の提供を求められ、家族として「役に立つのであれば」と考えたことを覚えています。
私が3歳の時、妹は生後2か月で亡くなりました。こうした経験もあり、母の思いを受け継いで、妹も私たち夫婦も献体したいと思うようになりました。少しでも今の医学の役に立てばと思っています。

協会からのコメント

献体が医学の発展に大きく貢献していることは、医療教育の現場からも広く認識されています。実際に解剖実習などを通して、多くの医療者が人体の構造だけでなく、生前の病状や経過を学び、臨床に生かしています。ご家族の大切なご意思が、次の世代の医療を支えていることに、深く敬意と感謝を申し上げます。
(【情報BOX】「リビング・ウイル」と「献体」知っていますか? 話していますか? もご参照ください。)

【情報BOX】「リビング・ウイル」と「献体」知っていますか? 話していますか?

「人生の最期をどう過ごしたいか」そして「死んだ後はどうしてほしいか」 「リビング・ウイル」も「献体」も、本人の意思が尊重されることはもちろんですが、本人がどれほ…

また近年は、病気や臓器だけでなく、患者さんご本人の思いや人生の背景に目を向ける「患者中心の医療・介護」が重視されています。その中で、ご遺族が体験されたことや率直なお気持ちを言葉にして共有してくださることは、医療や介護の質を高めていく上で欠かせない大切な視点です。こうした語りは、医療にとっての貴重な学びであり、「情報の献体」とも言えるものです。
樺太でのご苦労を含めたご家族の歩みの中で育まれた、「今の医学に役立ててほしい」というお気持ちを、私たちは真摯に受け止めてまいります。心からの感謝とともに、ご冥福をお祈りいたします。