祖父の看取りを振り返って ――「小さな灯台プロジェクト」を読んで考えたこと
桃子(大学3年生) 東京都
大学の教授を通じて近藤先生とのご縁があり、『小さな灯台プロジェクト』について知りました。
「小さな灯台プロジェクト」を読んで、看取りや終末期医療について改めて深く考える機会となりました。これまでは、安楽死は日本では認められていないことや、延命治療といえば祖父が経験した気管支切開や人工呼吸器の装着などをイメージしていました。しかし、終末期医療には、患者本人が心臓や呼吸が停止した際に心肺蘇生(CPR)を行わないという意思表示であるDNR(Do Not Resuscitate)という選択肢があることを初めて知りました。
祖父の経験から考えたDNR
もし祖父がDNRを希望していたらどうなっていたのだろうと考えました。祖父は気管支切開後、痰が詰まって苦しくなり、私たち家族は何度もナースコールや救急対応をお願いしていました。もしDNRを選択していたら、心肺停止となっても蘇生処置は行われず、そのまま亡くなっていた可能性があります。そのことを想像すると、とても複雑な気持ちになりました。ですが祖父は亡くなる前に「やりきった、悔いはない」と話していたそうです。その言葉を思い出すと、本人がどのような最期を望んでいたのか、生前から話し合っておくことの大切さを感じました。
また、最近では妊婦さんが事故にあい赤ちゃんに重い障害が残るというニュースが印象に残っています。大人であれば自分の意思を伝えることができますが、赤ちゃんは自分の意思を表現することができません。そのため、家族や医療者がどのような選択をするべきなのかは非常に難しい問題だとエピソードを読み改めて感じました。
家族の思いと、本人の意思
「カリフォルニア・ドーターズ(カリフォルニアから来た娘症候群)」のエピソードでは、「父の意思を私は尊重できた」という言葉が心に残りました。この話を読んで、私は祖父のことを思い出しました。
祖父が気管支切開をしたとき、母を含む三姉妹の意見は分かれていました。祖父と一番近くで過ごしてきた母は、「これ以上つらい思いをさせたくない」という考えでした。一方で、二人の姉は「まだ死なせたくないから気管支切開をするべきだ」と考えていました。
家族全員が祖父を大切に思っているからこその意見の違いだったと思います。しかし、本人の意思が十分に共有されていなければ、家族は「本当にこれで良かったのだろうか」という思いを抱え続けることになります。この事例を通して、家族の思いだけでなく、本人の意思を早い段階から確認し、共有しておくことが重要であると感じました。
「看取る」ということ
特に印象に残ったのは、ご夫婦のエピソードです。妻は「この人は毎晩、お経のテープを聴きながら眠っていたの。今日も『このまま逝けたらいいね』と言っていたのよ。だから看護婦さん、いいのですよ」と話していました。この言葉から、このご夫婦は普段から死について話していて仲の良さやお互いの気持ちを理解し合っていたことが伝わってきたと同時に、後に続く「誰もが迎える死を、ただ悲しいだけの出来事にしたくない」という言葉にも深く共感しました。死は避けることのできないものですが、最期までその人らしく生きることや、残される家族が納得して見送れることはとても大切だと思います。
このエピソードを読んで、私の祖母の話を思い出しました。祖父が亡くなる夜、祖母は「その日に限ってよく眠ってしまった」と話していました。家族としては最期の瞬間に立ち会いたいと思っていても、実際にはそうならないこともあります。私は、看取りは必ずしも最期の瞬間に立ち会うことだけではないと感じました。
祖父が亡くなった後、家族みんなで祖父の会社や好きだった場所を訪れました。それは祖父の人生を振り返り、感謝を伝える時間でもありました。祖父は本当は自宅で最期を迎えたいという希望を持っていましたが、その願いは叶いませんでした。その経験があるからこそ、これからは本人が望む場所で最期を迎えられる社会になってほしいと強く思いました。
その人が望む最期を支えるために
さらに、在宅での看取りについて書かれていた内容も印象的でした。住み慣れた家で過ごすことは、本人や家族の安心感につながり、家族も最期まで一緒に過ごすことができます。しかし、医療や介護だけでは支えきれないこともあります。
制度だけでは解決できない家族それぞれの事情や思いがあり、最期は一人ひとり異なります。だからこそ、専門職は「どのような支援をするか」だけではなく、「その人がどのような人生を歩み、どのような最期を迎えたいのか」を丁寧に聞き続ける姿勢が大切なのだと感じました。
元気なうちから、思いを共有しておく
今回「小さな灯台プロジェクト」を通して、終末期医療や看取りには正解がなく、一人ひとりの価値観や家族の思いが大きく関わることを学びました。そして、本人の意思を尊重するためには、元気なうちから家族と話し合い、思いを共有しておくことの大切さを改めて実感しました。
私自身の祖父との経験とも重なる部分が多く、より身近な問題として考えることができました。この学びを将来の仕事にも生かし、人の人生や家族の思いに寄り添える人になりたいと思いました。


