ショパンを聴きながら、最期の時を
遺族アンケート
81歳夫/看取った人・妻/石川県/2025年回答
背中や腰の痛みのため、リハビリを目的に入院していた主人を、突然、脳幹梗塞が襲いました。 退院予定日のわずか2日前のことでした。私たちが病院に駆けつけた時には、主人はすでに意識を失い、人工呼吸器が装着されていました。
主人のリビング・ウイル希望表明書は「痛みをとる治療以外は、いかなる延命措置もしないでほしい」と記してありました。担当の先生より「一度装着した人工呼吸器は、外すことはできないけれど、会わせたい人に会わせたら、積極的な治療は止めましょう」と説明を受けました。その言葉に従い、遠方に住む主人の弟や孫とも、最後のお別れをすることができました。
希望表明書には、「可能ならば、いつも聴いているショパンなどのクラシックを聴きながら、清潔な環境でゆっくり過ごしたい!!」とも記されていました。担当の先生のご厚意で、病室で息子が編集した主人の好きな曲を流すことができました。また、主人との思い出の写真もパネルいっぱいに貼り、病室を飾りました。
千葉から駆けつけた娘と毎日、片道50分かけて病室に通い、思い出話をしたり、好きだった万葉集を朗読したりして主人と過ごしました。倒れてから2週間、私と子供3人に見守られ、主人は静かに旅立ちました。
意識のない主人の髭を剃ったり、シャンプーをしたり、いつも清潔にしていただいたスタッフの皆様には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。もしリビング・ウイルの希望表明書がなかったら、私たち家族は、どのような治療を望んだらよいのか、なかなか判断することができなかったと思います。そのことを、今、つくづく感じています。
協会からのコメント
退院間近の突然の脳幹梗塞。駆けつけた時にはすでに人工呼吸器が装着されていたという現実に、どれほど動揺されたことでしょう。しかし、リビング・ウイルがあったことで、その後の治療方針を迷わず決断し、ご主人が希望された「ショパンを聴きながら」という環境を整えることができましたね。意識がなくても、ご家族の思い出話や万葉集の朗読は、ご主人の心に温かく届いていたはずです。深い愛情に満ちた「看取りのエピソード」です。
投稿いただき、誠にありがとうございました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

