生きていてくれるだけで良かったのに……
遺族アンケート
86歳夫/看取った人・妻/東京都
「リビング・ウィル」に入り、本人の意思通り何本ものチューブを身体に刺しながら意識もないままに生きながらえなくて良かったと思う一方、今でも実は「これで良かったのか」という思いも正直あるのです。それほど、主人亡き後の寂しさ、つらさは今の時点で耐えがたいものがあります。わがままかもしれませんが生きていてくれるだけで良かったのに……という思いは今も消えません。幸い子ども二人がいて孫たちもおりますが、彼らの前では精一杯元気なふりをしているものの、58年間共にした思い出はそれこそ子どもたちといえども共有できないものも多く、思い出しては涙しています。
そういう私も子どもたちの同意を得て尊厳死を望んでおりますし、それを変えるつもりはありませんので、矛盾する思いを抱えながら、あとは時間の経過とともに徐々に悲しみが癒えることを待つしかないと思うこの頃です。
もう一つ感じたのは死後の手続きの煩雑さです。これがあるために何度となく区役所や年金事務所に通い、所帯主が変わったことによるその他の変更をせねばならず82歳の老人には荷の重い仕事でした。おかげさまで子どもたちの全面的な協力で何とか乗り切れそうですが、もう少し簡素化できないものかとつくづく実感しています。
協会かのコメント
月日の長さに関係なく、伴侶を亡くする悲嘆感情は何ものにも勝る最高位の哀しみであることがグリーフ・ストレスの研究によって明らかにされています。
58年間もの長い人生を共にされてきたと……その哀しみが、ひしひしと伝わってきます。「生きていてくれるだけで良かったのに……」「子どもでも共有できない……」という言葉の一つ一つ、そのままを「看取りのエピソード」として皆様にご紹介させていただきますね。悲しみは喜びと表裏。二人でいた喜びを思い出せる日は必ずきっと来る、明けない夜はないという言葉もまた、お気持ちの支えになさってください。ご主人様のご冥福をお祈りしつつ奥様の哀しみに寄り添っております。
*配偶者の死後の事務処理は本当に煩雑で面倒なものです。今は終活ノートなどで、するべきことの順番と必要書類、届け出るところをまとめたMOOKのようなものがたくさん出ていますが、おっしゃるとおり、この事務手続きの簡素化対策も高齢社会の一つの課題として「小さな灯台」は照らし続けてまいりましょう。