【情報BOX】看取りのプロセスで家族が果たす役割 No.3看取りのその後に……「死後事務」というとても大事な義務があります

故人を看取った後、家族はゆっくりとその死を悼む間もなく「やらなければならないこと=死後事務」に追われます。だからこそ、臨終の間際、その後しばしの間はお別れの時間をつくってあげられるよう、配慮してあげてほしいものです。

それでは、看取りの後に家族がやらなくてはならないことを時系列に説明します。前もって考えておいたり、準備したりできるものもありますので、まずは知っておきましょう。

◎すぐにやること
1 死亡診断書(死体検案書)の受け取り
死亡診断書は、人が死んだことを医学的・法律的に証明する書類です。病院で死亡した場合はすぐに死亡診断書を書いてもらえます。「自宅で死亡したら死体検案書になるから警察が家に来る」……と思っている方も多いと思いますが、普段から継続して診察してもらっているかかりつけ医に連絡すれば、死亡診断書を書いてもらえます。
※死亡診断書(死体検案書)は、その後の保険金の手続き等に必要ですので必ず複数枚コピーをとっておきましょう。

2 葬儀社への連絡
看取りの後には、まず葬儀社に連絡をします。お葬式をしない場合でも、ご遺体の搬送、安置、納棺、火葬場の手配などは必要ですので、葬儀社を利用する人が多いです。家族を亡くして気が動転していても、葬儀社の方々がいろいろ手配してくれます。

「自分が希望するお葬式にしたい」「家族に負担をかけたくない」という理由で、故人が生前に葬儀社と「生前契約」を結んでいる場合もあります。生前契約を結ばないまでも、どの葬儀社にするのかは事前にリサーチしておくといいでしょう。

3 死亡届の提出(7日以内)
死亡届は、戸籍法に定められた義務で「死亡診断書(または死体検案書)」とともに、届出義務者が提出します。届出義務者とは「同居の親族」「その他の同居者」「家主、地主、家屋・土地の管理人」「同居していない親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者」です。

ここで、親族を看取った経験のある人は「あれ? 葬儀社の人が役所に提出してくれたような気がする……」と思われたのではないでしょうか? 葬儀社の人は「届出義務者」ではありませんが、届出義務者の使者として役所に死亡届を提出し、埋火葬許可証をもらってきてくれます。ただし、死亡届の記入は届出義務者が行う必要があります。

4 埋火葬許可申請書の提出(7日以内)
死亡届の提出とともに行います。火葬許可証がなければ火葬を行うことはできません。

5 通夜・葬儀
故人とお別れをする儀式です。できるだけ故人の希望に沿うように執り行いたいものです。葬儀の形は多種多様ですが、近年は新型コロナの影響もあり、近親者だけで行う家族葬が増えているようです。また、通夜・葬儀をせず、火葬のみで故人を送る直葬にする人もいます。

6 出棺・火葬
葬儀後すぐに火葬が行われる場合が多いですが、地域によっては葬儀よりも前に火葬をする場合もあります。

7 納骨
いつ行うという決まりはありません。最近では、お墓をつくらず、永代供養、散骨、樹木葬などにする人も増えています。

◎葬儀が終わって一段落したらやらなくてはならないこと
役所関係を中心に、手続きが目白押しです。「手続き一覧」などをくれる葬儀社も多いので、もれがないように手続きをしましょう。働いているとなかなか平日役所に出向くのも大変ですので、できるだけ一気に済ませられるように準備しましょう。

  1. 国民年金・厚生年金関係
  2. 健康保険関係(75歳以上は後期高齢者医療保険)
  3. 介護保険関係
  4. 世帯主の変更届(故人が世帯主だった場合)
  5. 銀行への連絡
  6. クレジットカード会社への連絡
  7. 免許証・パスポートの返納
  8. 公共料金の精算・手続き
  9. インターネット・携帯電話の解約
  10. その他

◎腰を据えてやらなくてはいけないこと
1.住居の片付け
同居していた場合には、故人の物を少しずつ整理していきましょう。問題は別居していた子どもが、一人暮らしだった親の家を片付ける場合です。特に賃貸の場合には、賃貸料が発生しますので、とにかく急がなくてはなりません。そんなに広くないからと思っていても、いざ出してみるとびっくりするくらい物が出てきます。家の片付けで疲れ果てて体調を崩してしまう人もたくさんいます。遺品整理の専門の業者もありますので、検討してみてもいいかもしれないですね。

持ち家だった場合には、片付けだけではすみません。空き家になってしまうからです。この先誰も住む予定がないのであれば、早いうちに対策をとることをお勧めします。

2.相続手続き
相続の話し合いが精神的にとてもつらいものになる場合もあります。まずは、財産の洗い出し、債務の有無などからはじまり、家族の話し合い……もめて解決しなければ調停などもあり得ます。

相続税の申告は、故人が亡くなってから10か月以内ですので、これものんびりできるものではありません。

遺された家族がもめないように、元気なうちに遺言書などで自分の財産をどうしたいか考え、意思が実現できるよう準備してほしいと思います。遺言書のハードルが高いと思う人でも、せめて自分の財産の全容は家族がわかるようにしておきましょう。

ぜひこの記事も参考にしてください。

【情報BOX】―想いを未来へつなぐ―・遺贈寄付を知っていますか?No.1 遺贈寄付と遺言書の作成
【情報BOX】―想いを未来へつなぐ― ・遺贈寄付を知っていますか?No.2 遺贈寄付を執行してもらうために
【情報BOX】―想いを未来へつなぐ― ・遺贈寄付を知っていますか?No.3 遺贈寄付をする上で気を付けておきたいこと

◎死後事務をしてくれる家族がいない場合
死後のことを頼める家族がいない場合、死後の事務手続きや身辺整理はどうすればいいでしょう。選択肢として、生前に民間事業者と「死後事務委任契約」を結ぶこともできます。

この契約により、葬儀・埋葬や年金・保険などの手続き、公共料金の精算、住居の片づけなどをお願いできます。

まだまだ対応する制度やサービスが追いついていないと感じますが、切実なニーズがあれば、いずれそれをカバーするサービスがうまれてくるはずです。ただし、新しいサービスは法律が後手になることも多いため、契約する際には細心の注意が必要です。

◎まとめ
家族を看取るのは、精神的にも肉体的にもハードです。多くの人にとって「はじめての経験で知らないことばかり」ですので、すべてが手探りで迷うことも多いものです。

これらの家族の負担を減らすためにも、看取られる側の準備が大切です。漫然と「子どもの世話にはなりたくない。迷惑にならないようにする」と言っているだけではだめなのです。意思表明をし、明文化し、知らせておくこと……これをするだけで、随分遺される家族は救われます。

同居していれば、なんとなく意思疎通ははかれるかもしれませんが、別居していて滅多に会わない場合にはそれは難しいことです。だからこそ、親は「話しておく」、子は「聞いておく」という努力が必要な時代なのだと思います。

そして、看取りの前後はこれだけ家族がすべきことがたくさんあります。「病院や施設との連絡調整」「親族と意見調整」「荒れた親の家の片付け」……仕事も含めた日常生活を送りつつこれらをこなすのには無理があります。キャパオーバーにならないよう、今あるサービスをうまく活用できる賢い消費者になってほしいと思います。

北欧で看取り休業があるように、高齢化率が高い日本でもこのような制度ができるようにと願っています。

◎主な参考資料
1)法務省 https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html,2023,3,29
2)認定NPO法人エンディングセンター https://www.endingcenter.com/,2023,3,29
3)みんなの遺品整理,空き家になった実家の対処法 https://m-ihinseiri.jp/article-know-how/familyhome-akiya/,2023,3,29
4)相続税のチェスター,葬儀関係編 https://chester-tax.com/encyclopedia/16_index.html,2023,3,29
5)小さなお葬式 https://www.osohshiki.jp/column/,2023,3,29
6)家族のお葬式,お葬式コラム https://www.kazoku24.com/column/,2023,3,29
7)いい葬儀 https://www.e-sogi.com/guide/,2023,3,29