安楽死法立法めぐり、イベリア半島が熱い
安楽死法立法めぐり、イベリア半島が熱い
スペインは議会の検討前進、ポルトガルは僅差で否決
スペイン下院は6月26日、中道穏健派の社会労働党政権が提示した安楽死法案を「議会で検討する」ことを賛成多数で可決した。今後、議会での審議が進むとみられる。一方、西隣のポルトガル国会は5月29日、僅差で安楽死法案を否決したばかり。死のあり様の選択をめぐる賛否両論でイベリア半島が熱い。
スペインは政局が不安定のさなか。保守中道政権を組んできた第1党の国民党の政治資金問題が摘発され、1か月前に政権が右派から左派に交代した。誕生したばかりの穏健派、社会労働党政権が下院に求めたのが「末期患者がほう助自殺を選択する権利を認める法案を国会が検討する」こと。
下院(定数350)の投票結果は、賛成208:反対133、棄権1。反対票は伝統的保守の国民党がほとんどだったが、賛否は左右の対立という図式ではない。メディアは「安楽死合法化は大きく前進」と報道したが、これには理由がある。
前政権の末期にカタロニア地方議会が国会に提出した「安楽死合法化の検討」が、同じ下院で賛成多数で可決(5月10日)されていた。政権交代を挟んで2回目の投票となったが、今回は賛成票が30票以上伸びた。新政権が法案を「ほう助自殺」に絞ったことと新興の中道右派政党が賛成に回ったことが大きかった。
スペインと前後して安楽死合法化の賛否議論が高揚していたのがポルトガル。5月29日、社会党政権が提出した「医師ほう助自殺合法化」法案は、国会(定数230)で賛成110:反対115、棄権4のきわどい僅差で否決された。国会前には1週間前から「Stop
Eutanasia」のプラカードを掲げる女性たちが目立った。
一応決着をみたポルトガルも賛否半ばが今後どうなるのか。スペインは現国会では「賛成多数」が崩れないが、政局不安から総選挙も噂されている。オランダ、ベルギー、ルクセンブルグに次ぐ「欧州4番目」の国が誕生するのか、目が離せない。
(*イベリア情報については、死の権利協会世界連合、スペインの新聞「EL PAIS」、通信社AFPのwebsiteによりました)