中国のホスピスについて思うこと(The New Yorker 4月6日号から)
中国では、死について語ることがタブーとされ、「終末期ケアは家族の問題である」と考えられており、ホスピスは相変わらず馴染みの薄い概念です。
新型コロナウイルスによるパンデミックの初期段階では、中国の医療システムの機能不全が明らかになりました。このままいけば、さらに根深い問題である「終末期ケアの危機」が暴き出されることになるだろうと強く感じます。経済発展と医学の進歩は、中国人のこれまでの生活様式をがらりと変えましたが、「どのように死ぬか」という終末期の問題については、全く何もしていないというのが現状です。
筆者が、まさに終末期の段階にいる中国の医師にインタビューした時のことです。医師はこう言いました。
「終末期ケアは、もっとオープンに話し合わなければならない問題であると思いますが、この問題には歪んだ“思惑”が根底にあると感じます。つまり、終末期ケアを施すよりも化学療法や外科手術のほうが儲かるので医師はそちらに重点を置くという現実、麻薬に対する偏見、そして大金を使えば病気も治るという幻想…などがあるのです。しかし大事なことは、全ての人は『自分に何が訪れるのか』を知るべきで、その日が来たなら、それをどう受け入れるかを自分で選択すべきなのです」
中国の現在の政治体制が、人々から「重要な選択は自分でする」という能力を奪ってしまい、自分で選択するという当事者意識も責任感もなくしてしまうほどに幼稚化させてしまっていると感じざるをえません。
「尊厳ある死」とは、生命の長さと質は別物である、という考えを前提にしています。人生の最終段階において自分の人生を振り返り、人生の最期をどうするのかを選択する、という能力を身に着けることが必要です。そのためには、これまで多くの中国人にとって未知であった、ある種のパワーが求められていると思います。
全文(英文)はこちらから
https://www.newyorker.com/magazine/2020/04/06/chinas-struggles-with-hospice-care