回復の見込みがなく、すぐにでも命の灯が消え去ろうとしているときでも、現代の医療は、あなたを生かし続けることが可能です。人工呼吸器をつけて体内に酸素を送り込み、胃に穴をあける胃ろうを装着して栄養を摂取させます。ひとたびこれらの延命措置を始めたら、はずすことは容易ではありません。生命維持装置をはずせば死に至ることが明らかですから、医療者が躊躇するのです。
「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビング・ウイル(LW)です。
「リビング・ウイル(人生の最終段階における事前書)作成にあたって」
公益財団法人 日本尊厳死協会
リビング・ウイルを作成する意味
日本尊厳死協会は、人生の最終段階における医療・ケアを自ら選択する権利が保障され最期まで自分らしく
尊厳を保って生きることができる社会の実現を目指しています。当協会が発行するリピング・ウイルは、事前に医療・ケアの選択について意思表示しておく文書です。リビング・ウイルを作成し提示することにより、あなたの希望があなたの生活・医療・ケアに関わる方々に伝わり、その結果あなたの生き方が最期まで尊重されることになります。リビング・ウイルの作成にあたって最も優先されるべきは本人の意思で、大切なことは医療者や家族、あなたをサポートしてくれる方とあなたの意思についての情報を共有し理解しあうことです。リビング・ウイルを作りたくない方は作る必要はありません。
書きたい時がきたら作成してください。
自己決定権
もしもの時、どのような医療を望むか望まないかは、あなた自身が決めることです。これは憲法で保障されている基本的人権の根幹である自己決定権に基づいています。
生命維持装置を使用されている方
外傷や神経、心臓、肺などの病気あるいは遺伝性の病気により人工呼吸器や透析等の生命維持装置を使い生活されている方にとって、生命維持に関わる装置はただ死期を引き延ばすだけの装置ではないことは言うまでもありません。当協会がそれら生命維特装置の不使用を暗に示唆することはありませんし、使用される方の生存が脅かされてはならないと考えます。
救命救急を拒むものではない
このリビング・ウイルはあなたが意思表示できなくなった状況において、意に添わない、死期を引き延ばすだけの措置を受けずにすむようにするためのものです。
一時的に生命維持が困難になった際の、回復を目的とする救命を拒むものではありません。
情報収集と選択
リビング・ウイルを作成するにあたり、人生の最終段階のさまざまな状態や措置について、当協会や信頼できる機関から適切な情報を収集し、内容をよく理解したうえであなたにとって最善と思う選択をしてください。
人生会議(ACP)
人生の最終段階はリビング・ウイルをもとに、医療・ケアチームやアドバイザーなどから十分な説明を受け、家族を含めた話し合いを繰り返し、より良い選択をすることを推奨します。この相談過程を人生会議あるいはACP(アドバンス・ケア・プランニング)と言います。
気持ちの変化
このリビング・ウイルはあなたの考え方が変わればいつでも撤回することができます。病状や環境の変化、医学的な評価の変更があれば気持ちが変わることもあります。年の初めや誕生日などに気持ちを確かめるのも大切です。撤回を希望する場合は当協会にご連絡ください。
「私の希望表明書」について
協会発行の「リビング・ウイル」(以下、LW)は、もしものときには「私は、延命措置を望まない」という、包括的な事前指示書です。LW尊重の医療は定着してきていますが、医療技術は日々進歩し、超高齢社会の到来による認知症患者の増加など社会情勢の変化も著しく、人生の最終段階のあり方もいろいろな考えが生まれています。人それぞれの思いにつながる「最期を過ごしたい場所」や「食べられなくなったら」を考える人が増えています。協会LWだけでは伝えきれない「私の希望」を伝える表明書をご用意しました。
ご記入、ご利用に当たり
○「私の希望表明書」は、日本尊厳死協会会員が協会に登録した「リビング・ウイル」に付随し、補完する文書です。2018年1月から発行しました。
○ただ「私の希望表明書」は協会LWと違い、協会に登録する文書ではありません。必要とする会員が記入し、個人的に保管する文書です。
○「あなたの意思表明書」ですから、記入日、氏名は直筆にしておきましょう。
○希望事項はチェック方式で記入します。文書記載の項目以外に医療やケアに関する希望、あるいは思いに関する情報がありましたら、「その他」に書き留めておけばよいでしょう。
○自分でわからないことや、決められないことは記入しなくても構いません。
○何らかの理由で、あなたの思いや希望が変わったときは、いつでも撤回、書き改めることができます。変更したときは、その日付をわかるようにしておきましょう。
○書き換える時に備えて、記入前に予備をコピーしておくことをお勧めします。用紙はこのホームページからダウンロードできます。
○「私の希望表明書」は本体の「協会LW」と同様、医師やご家族、あなたをサポートしてくれる方々と情報共有しておくことが大切です。「私の希望」をみなさんに伝えておきましょう。
死期が迫っている患者に耐え難い肉体的苦痛があり、患者が「早く逝かせてほしい」との意思を持っている場合に、医師が積極的な医療行為で患者を死なせることを安楽死と呼びます。
人生の最終段階において延命措置を行わないこととは明らかにことなりますし、日本では患者を安楽死させた事件では、いずれも医師の有罪判決が確定しています。欧米などでは、この安楽死を合法的に認めている国・州がありますが、日本尊厳死協会は安楽死を支持していません。
LWに書かれている「延命措置」とは、回復の見込みがないと診断された患者で、かつ死期が近づいているにもかかわらず、人工呼吸器や透析、胃ろうなどによって生命を維持するための措置です。意識があっても人工呼吸器を着けていれば話すことができませんし、原疾患による苦痛とも闘わねばなりません。
延命措置を断っても、身体の痛みや呼吸の苦しさを緩和するための医療行為や、精神的・社会的な苦痛を和らげるケアは必要です。全人的な緩和ケアを積極的に行ってもらうことが、安らかな最期を迎えるための必須の条件だとも考えられます。リビング・ウイルの項目にこの緩和ケアが盛り込まれているのも、そのためです。最近は痛みから解放される医療用麻薬の研究や使い方も進歩しています。
日本尊厳死協会に入会したい場合は、電話かファクス、あるいは「資料請求フォーム」から、住所、氏名を明記のうえ、パンフレットを請求してください。ご夫婦で入会される場合は、LWがそれぞれ必要です。何部でも無料でお送りします。パンフレットに書かれている説明を熟読のうえで決めてください。大切なのは、家族の皆さんと相談したり、友人と話し合ったりして、納得したうえで入会していただくことです。わからないことがあれば、お気軽に電話でもファクスでもお問い合わせください。
入会登録すると、「リビング・ウイル」を協会で保管します。そのコピー2部と会員証をお送りしますので、会員証は健康保険証などとともに財布などに入れて持ち歩いてください。LWのコピーは家族か親しい友人に渡してください。
会員には年4回、会報「リビング・ウイル」をお送りいたします。LWに理解のある受容協力医師をお知らせできるほか、医療相談の窓口もございますので、お気軽にお電話ください。
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電話:03-3818-6563 / FAX:03-3818-6562