第11回 日本リビングウイル研究会 「新しいリビング・ウイル─自分らしい最期と看取り」【ビデオ報告】

◆理事長ごあいさつ

公益財団法人日本尊厳死協会 代表理事 岩尾總一郎
人生の幕引きという、最大かつ最後の決定は、「最初からみんなと一緒に考える」のではなく、まず「自分はどうしたいのか」を考え、リビング・ウイルを準備することから始めるのが肝要です。
その後「人生会議」といわれる話合いを行い、周囲の理解と共有を確かにしていくことで、自分の人生を自らリードし、尊厳を守り保つことに繋がります。

◆第11回日本リビングウイル研究会のテーマと概要の紹介

コーディネーター 満岡聰
1976年に日本尊厳死協会が創立してから47年、日本の医療は各段の進歩を遂げ、社会情勢も大きく変化しました。医療の世界では回復不能の患者さんに心肺蘇生を試みないことは当然となり、社会的にも死を語ることはタブーではなくなりました。
それに加えて未だ収束の気配を見せない新型コロナウイルス感染症の世界的流行が、人々の生活様式や心理面に大きく影響を与えました。
その中で協会は、リビング・ウイル、私の希望表明書、会員証などを、今の社会に対応するように一新しました。今回の研究会ではその経緯と意味、より皆様の想いに寄り添い、希望を叶える協会であるための活動内容をお伝えします。

◆新しいリビング・ウイルの誕生と経緯

コーディネーター、満岡内科クリニック理事長 満岡聰
2022年11月に改訂されたリビング・ウイル誕生の経緯を詳しくご説明し、実際の場でどのように有効に使わるのかをご紹介します。リビング・ウイルとACP(人生会議)はお互い補い合って威力を発揮するものです。
今回は「誤嚥性肺炎・認知症」、「癌の末期」、「心不全・呼吸不全」の3つのケースを例に挙げてご説明します。

◆日本の看取りの現状

長尾クリニック名誉院長 長尾和宏
住み慣れた自宅や、高齢者施設の居室での看取りが増えてきていることと、ご本人の意思が尊重されることはイコールではありません。人生の最終段階での医療を決めているのは、2/3が家族、1/3が医師、本人の意思が反映されるのはたった3%とも言われています。
リビング・ウイルを準備して、それを中心に最期まで自分の希望に沿った生き方をするためのヒントをお話します。

◆小さな灯台プロジェクト

マザーリング&ライフマネジメント研究所長 近藤和子
患者・家族が感じた人生の最終段階と看取りの場面での葛藤や問題点、それに対するアドバイスをお話します。
「小さな灯台プロジェクト」の名前の由来は、あるご遺族様から、「看取りは、ひとつひとつのことが初めての経験で、大切な人の命がかかっている大変なことです。まるで灯りひとつない、暗く荒れた海に放り出されて翻弄される小舟のようでした。
しかしその時、協会の存在が、小さな光を届けてくれて『尊厳あるゴール』にたどり着くことができました」と書かれたお便りをいただき、私たちはいつでも小さな灯台でありたいと思い、そこから名付けました。誰かの体験が誰かの助けになる、このプロジェクトをご案内します。

◆自治体だからできること、やるべきこと~横須賀市の事例から~

日本尊厳死協会理事 川名理惠子
2013年に横須賀市が調査した結果、60%の方がご自宅で最期を過ごしたいということでした。自治体としては、そのご希望を支えるための体制作りをし、最期の過ごし方や延命措置についてもご本人の希望に沿うサポートが可能になるよう、リビング・ウイルの普及啓発活動に努めました。
どの地域にも、医療・介護・生活支援を包括的に支える「地域包括ケアシステム」がありますが、今回は私が実際に仕事をした横須賀市のシステムをご紹介しながら、自治体がすることと、住民が心しておくことをお話します。

◆カナダの安楽死の現状と将来

日本医科大学医学教育センター特任教授 北村義浩
世界30か国58団体からなる「死の権利協会世界連合 World Federation Right to Die Societies」の隔年大会が2022年11月にカナダのトロントで開催されました。
世界の潮流は安楽死容認、法制化の方向に進んでいますが、カナダでは2016年にMAID(Medical Assistance in Dying 死における医療援助法)が合法化されました。合法化からわずか5年で累計31,664名がMAIDを受けて亡くなりました(2021年単年では10,064名)。
カナダは患者の権利と受けるサポートが幅広く認められており、中でも「自主性の尊重」「差別のない医療サービス」「事前指示書が尊重されること」などが特に重要視されています。今回はビデオ参加ではありますが、当地の安楽死の現状と今後についてお話します。

◆参議院議員として目指すこと

参議院議員 友納理緒
2022年夏の選挙で初当選し、今後終末期医療に関して必要となる法整備に取り組んでいきたいと思います。医療の現場においては、人の生死にかかわる決定を迫られる場合がありますが、日本には医療に関する自己決定の権利自体を規定する法律がありません。
「終末期医療における本人意思尊重を考える議員連盟」とともに、法制化について皆様と議論を深めていきたいと思います。

◆会場・ウェビナーの皆様とのディスカッション(1)

▼パネリスト
長尾クリニック名誉院長 長尾和宏
マザーリング&ライフマネジメント研究所長 近藤和子
日本尊厳死協会理事 川名理惠子
▼コーディネーター 満岡聰

◆会場・ウェビナーの皆様とのディスカッション(2)

▼パネリスト
長尾クリニック名誉院長 長尾和宏
マザーリング&ライフマネジメント研究所長 近藤和子
日本尊厳死協会理事 川名理惠子
▼コーディネーター 満岡聰

◆閉会のご挨拶

公益財団法人日本尊厳死協会 代表理事 岩尾總一郎