【命と向き合って】-今を精一杯生きる
40数年前、私は生死の境を彷徨った。仕事中の事故で内臓破裂だった。緊急の部分麻酔で即手術ということになった。断腸の思いを、身をもって体験したのだ。余りの痛さに(全身麻酔で)早く眠らせてと頼んだことなど、今も鮮明に覚えている。夜中に目を覚ました時、病室の外で家族の「今夜が山」というヒソヒソ話で「死」を予感した。しかし、その時に怖いとか死にたくないとかと言う感覚は一切なく、ただ「これで終わりか」と妙な気持ちになった。明日また目が覚めたら、生きていたら、いつ死んでも後悔しない人生を楽しく生きようと決めた。
運よく引き返した。この時から人生が変わった。他人から変わったやつだと言われ、非常識だと言われながら。会社を退職するまで有給休暇はすべて消化した。時には10日ほど山歩きし、オートバイのレースに海外までいった。結婚して子供が出来た。子供を連れ山登りや海へ行った。家族を巻き込んで好きなことを好きなように…。
一度死にかけた命、楽しく生きようとなんでも興味があったらやるようにした。100kmウルトラマラソンや10km遠泳大会、トライアスロンにも挑戦し世界選手権へも参加。震災の被災地へ復興の手伝いなど。とにかく一度しかない人生、いつ終わっても良いように精一杯今を生きる。こうして生かされた体、生きている間にと献血は100回近い数になった。死んだら使えるところは総べて臓器提供するように家族にも言ってある。無駄な延命治療はしてくれるなとも伝えてある。人は何万年も前からただ一人として死ななかった者はいない。人の死亡率100%だ。
二度と来ない今日という日を精一杯輝かせて…。そんな想いで毎日を。人生一度、唯一無二。
協会会員 中島 安興