第9回 日本リビングウイル研究会 パンデミックと尊厳死【ビデオ報告】
◆第9回 日本リビングウイル研究会 開会のご挨拶
テーマ:パンデミックと尊厳死
未だ効果的な治療法がないなか医療は逼迫し、尊厳死どころか救命措置さえ受けられないという医療状況が続いている。どうコロナと共生していけばよいのか、一つの知見を示したい。
代表幹事 岩尾總一郎
◆テーマと概要の説明
テーマ:パンデミックと尊厳死
2020.3.11にWHOによってパンデミックと認定された新型コロナウイルス感染症は、グローバル化された世界に拡大し、いまだ収束の気配を見せない。急激な需要に各国の医療体制は逼迫し「命の選別」が始まったとも言われ、過剰な延命措置へのアンチテーゼとして活動してきた日本尊厳死協会創立以来初めてのパラダイムシフトが起こっている。私たちはいま、命の危機における意思決定のあり方を問われている。
満岡内科クリニック院長 満岡聰
◆新型コロナウイルス感染症
助かる命を放棄してはいけない。
新型コロナウイルス感染症の現状、日本と海外の比較、今後の見通しについてのご説明。がんや慢性疾患で終末期を迎えるのではなく、急性期の場合、まずは適切な医療を受けることを優先すべき。
日本医科大学特任教授 北村義浩
◆諸外国の状況と対策、尊厳死に関する対応、パンデミックにおける意思決定コミュニケーション
トリアージの基準は「年齢」ではなく「公平」。
米国コロンビア大学病院で新型コロナウイルス感染症によって緩和ケアを受けた報告によると、入院患者の88%が事前指示書や治療継続指示書がなかったという。そして救急搬入時に意思決定能力がなかった人は88%にのぼる。
済生会今治医療福祉センター長、死の権利協会世界連合理事 野元正弘
◆日本老年学会からの提言の説明と注意喚起
偏見と差別をなくすべき、との高らかなメッセージ
2012年に日本老年医学会が出した「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する立場表明、2019年の「ACP推進に関する提言」そして新型コロナウイルス感染症流行期に行った提言について。「医療・療養場所の確保において、本人・家族の希望に配慮することが必要である」と。
東京大学大学院医学系研究科老年病学 小川純人
◆臨床の現場で何が起こっているか
在宅医療現場も追い込まれている現状にある
コロナを過剰に怖れることや、コロナ禍の環境の変化に適応できないことによる身体・精神状態の悪化が気になる。コロナブルー、コロナフレイル、コロナ認知症、シャムズという病態のこと。必要以上に情報に触れない、無理に普段の生活を変えないことが大事。デイサービスやショートステイが中止になる中、ICUばかりでなく、在宅医療現場もひっ迫してきている。
長尾クリニック院長 長尾和宏
◆第9回リビングウイル研究会 ディスカッション①
1.感染爆発や大規模災害のように治療を要する患者の数に対して医療資源が足りない場合、トリアージを行わざるを得ないが、その優先順位は?公平な基準は?
2.トリアージにおいて障がい者は差別を受けるのか?ガイドラインの解釈は?
3.重症化し、人工呼吸器、ECMOを装着した場合、回復しても重篤な後遺症が残り、死んだほうがましだという方々がいる。こうした方々の発生をどう予測し、どう対応していくか?
◆第9回リビングウイル研究会 ディスカッション②
4.コロナウイルス感染で重症となった場合、リビング・ウイルはどのように役割を果たすか?
5.短期間に重症化するコロナウイルス感染においてどのようなACPを行うか?アメリカで試みられているバイタルトークについて。
6.面会制限等により、死の尊厳が損なわれている。尊厳死は、尊厳ある生の先にある。パンデミックにおける大切な人との交流をいかにすべきか?
7.パンデミックにおける本人の意思尊重において日本尊厳死協会の果たす役割。
◆第9回リビングウイル研究会 閉会のご挨拶
代表理事 岩尾總一郎