【私の本棚】-達者でポックリ 他

「達者でポックリ」
 帯津良一著 東洋経済新報社

私が協会に入会して、初めて読んだ本です。言わば、私の「尊厳死」の入門書。帯津先生ご自身の日常生活を通じての人生観、死生観が見事に、そして分かり易く表現されています。
「せっかく訪れた死というチャンスを無駄にしてはいけません。死は人生の最後を飾るラストシーンなのですから」「なんでもこの世に引き戻そう、引き戻そうとする医学は、本当は間違っているのではないか」


「ああ、面白かったと言って死にたい」
 佐藤愛子著 海竜社

波乱万丈の日々を過ごされた、佐藤愛子さんの箴言集。『達観』という言葉が浮かびます。私の大好きな一文を一つ紹介します。
「死期が来たのを感じて、 『ありがとう・・・・』折角最期の言葉を残して静かにあの世へ行こうとしているのに、それ強心剤だ、やれ点滴だ、心臓マッサージだと無理やり引き止められ、気がついたらまだ生きているではないか。そこでまたやり直し。『ありがとう、さよなら』と言う。そして死んで行こうとするのにまた襟髪掴んで引き戻される。振り切って死ぬにも点滴に縛られて、気息延々息させられる。ああ、いったい私はどこで『ありがとう』をいえばいいのか。現代の科学が神の意思と戦うのは勝手だが、科学と神の間でウロウロする私の方はたまらない。生きるのもたいへんだが、今は死ぬこともタイヘンなのである。」
素晴らしい文章ですね。


「死を忘れた日本人」
 中川恵一著  朝日出版社

人生観、死生観と、宗教の関係を分かり易く解説しています。なぜ、日本人が「死」を語らないのか、「死」を忌み嫌うのか、この本の中にヒントがあります。又、ガンについても、分かり易く解説しています。
「ガンは緩やかに進行し『死が予見できる』ほとんど唯一の病気なのです。この『メリット』をうまく活用すれば、人生の仕上げの時間を手に出来ます。」「医者と患者・家族の「阿吽の呼吸」などは、もう存在しない。医師も殺人罪を問われるのはこまるので、延命を止めることはできない。希望する「死に方」や「死んだ後」をきちんと書面で意思表示しておこう。」


「人はいつか死ぬものだから」
 ポーリン・W/チェン著 河出書房新社

日本では無名ですが、米国の優秀な中国系の女性医師です。多くの患者の終末期、同僚医師の死を看取った体験を通じ、現代医療がかかえる様々な問題に向き合い、葛藤する若きドクターの力作です。「医師は患者の最期を見守る番人、末期患者とその家族の道案内という役割を担っている」
素晴らしい言葉です。全てのドクターに聞かせたいですね。

(T)