【私の本棚】-映画 コヤニスカッティ

今回は、映画「KOYAANISQATSI(コヤニスカッティ)」 1982年 製作:フランシス・フォード・コッポラ 監督:ゴッドフリー・レジオ 音楽:フィリップ・グラス をピックアップしました。

映画、とは書きましたが俳優も出演していませんし、科白もありませんので映像作品か環境ビデオと呼ぶ方が近いかもしれません。日本では六本木WAVE/シネヴィヴァン(現在は在りません)の杮落しで初上演されたように記憶しています。

90分近い作品にストーリーのようなものはありません、相当難解とも言えますが、なにせ映像に迫力がありますので、説明やコメントは不要/バックに音楽さえあれば良い、そう判断して製作されたのでしょう。あの映画「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」を作ったコッポラ氏ですから。 イントロで、特徴のある音楽とともにアメリカ砂漠地帯の壁画が流れます。そうして圧倒的な迫力で大自然、都会、送電線、街、ヒト、ビルディング、ジェット機、石油掘削機、高速道路、月、原水爆実験、宇宙ロケット等々、人間は何を作ってきたのか、あるいは何を壊してきたのか、我々は何者なのか、何処へ向かうのか、文明が衰亡する時は人類が死ぬ時なのか、技術を駆使した映像でこれでもかこれでもかと観るものに迫ります。

製作者は我々に考えることを強要しているようです。最近は観客動員数を稼ぐためかアニメーションや娯楽作品のオンパレードが多く、難しい顔をして映画を観るのは流行らない昨今ですが、30年以上前の当時はまだある種哲学的なこのような作品が作られる時代背景があったのだと思われます。 その為か改めて見直してみても、変わらぬ映像技術の高さや素材を発掘する眼に古さは感じませんが頭の芯が疲れます。感覚も若くないと洪水のような画面にシンドイ、エライ、クタビレル、そう感じてしまう、それも確かです。

今回は難解な作品を敢えて選択しました。構えてさぁ見ましょうと云うスタイルよりも、例えばBarのスクリーンにBGV(バックグラウンドビデオ)のように映写するだけのような見せ方が今風で向いているかもしれません。大手ビデオチェーン店なら借りることは可能でしょうが、また陽の目をみて公開されることも期待しています。 * 尚、‘コヤニスカッティ’とはネイティブインディアン/ホピ族の言葉で「平衡を失った世界」というような意味とVTRケースには記してあります、ご参考迄。 (文責・城野丈太郎)