困ります。尊厳死も、安楽死もごっちゃでは
わが国の尊厳死法制化の動きはマスメディアでたびたび取り上げられるが、安楽死法制化の動向を伝える記事はまず見かけない。国内には安楽死を求める動きがほとんどないからである。
だから、朝日新聞朝刊(2月12日)の国際面には、わが目をこらした。18歳以上の安楽死を合法化したベルギーで対象年齢の制限をなくす動きがあり、そのベルギー事情を伝えている。その関連で「法制化議論、進まぬ日本」という囲み記事をあった。
「日本には現在、安楽死を認める法律はないが…」と書き出し、「法整備を求める声は根強いが、安楽死の法制化に向けた具体的な議論は進んでいない」で結ばれていた。目をこらしたのは、書き出しと結びをつなぐ説明である。
説明材料に、横浜地裁判決(1995年)が判示した「延命治療中止要件」と、富山県の病院で人工呼吸器外し発覚(2006年)が記されている。(だから)「法整備を求める声は根強いが」と受け、「安楽死の法制化に向けた…」と展開している。
ちょっと待ってくれよ! 紙面に向かって思わず叫んだ。延命治療中止要件も、富山の病院(射水市民病院のこと)の件もいわば「尊厳死」にかかわることだった。それを材料に安楽死を語るとは〝筋違い〟だし、論理展開がおかしい。
「尊厳死」も「命を絶つ安楽死」とひとくくりにされる誤解が世に生じているが、きっとこんな記事もそれに一役買っているのではないか。すぐ朝日新聞社に電話をかけ、読者応答係にその旨の意見を申し上げた。「担当部署には必ず伝えます」と丁寧な応答があったが、さて、さて。
(し)