【私の本棚】-ご老人は謎だらけ
老人はなぜ、寄ると「病気自慢」なのか
光文社新書『ご老人は謎だらけ』(2011年12月刊、740円税別)が23の謎を解き明かしている。
著者の佐藤眞一さん(大阪大学大学院人間科学研究科教授)は老年心理学者で、認知症の著作もある。
協会の第2回LW研究会(11月)で講師を務めた。
「なぜ、能力が衰えても自信があるのか」「なぜ、ガクンと急に弱るのか」など5章に分類された23の「なぜ」が収められている。
その1つ、「なぜ、病気自慢をするのか?」。思い当たりますねぇ。
老人が寄り集まれば、必ず病気自慢。それも嘆くというより、楽しげに語り合う。
佐藤さんによれば、病気自慢は個人的なことを相手に話す「自己開示」。病気というネガティブなことをポジティブに開示(話す)し合うことで、お互いに弱みを見せ合った近親感がわく。しかも安心してそれが話題にできる。
つまり病気自慢は、孤独に陥りやすい老人が人と親身な関係をつくりだすため、本能的に身につけたワザというべきか。
「老人の謎」を解き明かすと、老いゆく人たちの「適応戦略」が垣間見える。