【私の本棚】-オレって老人?
団塊世代の50%は…、残りの50%は…
「団塊世代(1947年~1949年生まれ)が老年期に入ったので、毎年100万人ずつ高齢者が増える」という新聞記事を読んだことがある。
それにしても65歳で老年期はないだろう。
近ごろはやりの〝老人本〟の1冊、『オレって老人?』(みやび出版、2013年6月刊、1500円税別)が笑いをこめて抵抗している。
団塊世代で高齢者入りしたイラストレーター南伸坊の「じじ臭い」51話の面白エッセイ集。本をめくるといきなり「団塊世代のほぼ50%は自分を老人と思っていない」。返す刀で「残りのほぼ50%が、自分を老婆と思っているはずがない」と著者は断言する。
電車内で見かける光景。目の前に立つおばあさん(らしき人)に若者が席を譲っても、座ってくれない。
「自分を老婆と思っている老婆はこの世にいない」は世界の秘密というのが著者の見立て。
老人福祉法で65歳以上は「老人」と規定されても、自覚は乏しい。
それでもある日、首筋が痛くなり、肩がこり、足が冷える。医者に行ったら「老化ですねぇ」。
これもある日、本や新聞がうまくめくれないことに気づく。仕方がないからペロッと舌の先で指をしめらす。
年寄りは水分が少なくなるから、指先が乾く。めくる度になめる仕草は「因業な金貸しが夜中にお札を数えている」ようで、おもわしくない。51話のなかの「紙がめくれない」は、とっくの昔にわが日常だったと思い当たる。
本書には、著者の経験でもある「老化の兆し」の数々が出てくる。噴き出しそうなエピソードだが、「老化すると人は老人になる」と冷酷だ。そう書きながら、「ほんとうは、自分を私は『まだ若者』のつもりでいるらしい」と本音を明かす。オレって老人? という疑問符は団塊世代の共通記号なのだ。
自覚に個人差、迷いがあっても、老いれば年齢からくる心理や行動の変化は避けられない。「なぜ、あんなことをするのか?」と思われる行動の理由がわかれば、老親との関係も良好に保てるし、自身の変化を客観的に見つめることができる。